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【遊戯王】ドローの価値を高めたいデッキ構築論【コラム】

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「初手率*1」をはじめとして、序盤でどれだけ動けるかを測る指標は数多く存在している。
1枚で動き出せるカードへアクセスできるカードを多数投入して「n枚初動」と言う、2枚の組み合わせから成るカードでどこまで到達できるかを考察する……etc.
初動はいろいろな側面から研究されていると筆者は感じている。

遊戯王カードwiki - 確率

その一方で、中盤以降はどうだろうか。
中盤ともあれば相手の盤面もある程度形成されていることが考えられる。つまり、少なからず相手からの除去・妨害が想定される。 その影響もあってか、この時の指標については、現状かなり少ないように感じる。

とはいえ、中盤以降への理解が深まれば、自らのデッキで行う決闘構成が検討しやすくなるのではないだろうか。 特に、カジュアル寄りな決闘者・デッキ*2にとって、この部分に対する言及を増やしていくことは重要であると考えている。

今回は、このための指標の1つとして、「初動後のデッキレシピを閲覧する」手法を提案したい。

本手法の意義

まずは、本手法を行う理由を解説するために、中盤以降の戦い方について考察していく。

以降、ある時点で特定のカードに使い途がある状態のことを「(そのカードは) アクティブである」と称する。

カードがアクティブになるタイミング

前置きで「n枚初動」について少し話した。この n を上げることは即ち「初手率」を上げるための手段である。
このことは至る所で推奨されており、デッキ構築において重要なファクターを占めていると筆者も考えている。その一方で、準備が整った後のことを考えた場合はどうだろうか。

例えば「イビルツイン」の場合。

Live☆Twin キスキル
効果モンスター
サイバース族/光属性/星2/攻500/守0


このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①: 自分フィールドに他のモンスターが存在せず、このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。 手札・デッキから「リィラ」モンスター1体を特殊召喚する。
②: このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手モンスターが攻撃宣言する度に、自分は500LP回復する。

Live☆Twin キスキル | カード詳細 | 遊戯王 オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ - カードデータベース

Live☆Twin リィラ
効果モンスター
サイバース族/闇属性/星2/攻500/守0


このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①: 自分フィールドに他のモンスターが存在せず、このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。 手札・デッキから「キスキル」モンスター1体を特殊召喚する。
②: このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手は500LPを払わなければ攻撃宣言できない。

Live☆Twin リィラ | カード詳細 | 遊戯王 オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ - カードデータベース

「Live☆Twin キスキル」「Live☆Twin リィラ」は、いずれか1枚から「イビルツイン」モンスターを展開することで、 (1手遅れるものの) フリーチェーンで ドロー or 除去 を選べる盤面を形成できる。これらのカードにアクセスできるカードはテーマ内だけで3種類、「サイバネット・マイニング」まで含めると最大18枚のカードから展開できる。要は「18枚初動」だ。
だが、妨害の少ない環境において「イビルツイン」モンスターを展開するためだけにこのカードを採用するのであれば、手札・デッキに残された・被ったカードはアクティブでない*3カードに成り下がってしまう*4

つまり、「初手率」を上げるために採用したカードは、他の使い途を与えなければ悉くアクティブでない (=動けない) カードになってしまうのである。理想として、初動でのみアクティブなカードは初動が終わったらデッキに残っていない状態が望ましい。

もちろん、これは逆も然りである。
極端な話、初手に蘇生カードばかりが揃っていたとしても、全く動けないことは想像に容易いだろう。

以上のことから、「初動後にアクティブになるカード」と「初手後に非アクティブになるカード」とのバランスが重要であることが伺える。
前者は初動さえ決まってしまえば、ほとんどのカードがアクティブになるため、あまり気にはならないだろう。しかし、後者は「初期手札チェック」だけでは判断できない要素が多い。

そこで、本手法を採用することで、後者がどれほどデッキに眠ってしまうかの判断を補えると考えられる。

ドローによる期待値

デッキ構築は、無作為性をなくしていくもの、という側面がある。
そのため、サーチ・リクルートが豊富なテーマは理想的な初動に到達しやすく、結果としてそのデッキでやりたいことの再現性を限りなく高められる。

一方で、ドローによる無作為性がメインデッキには存在する。
特に、序盤でリソースが確保できなかった時、もしくは盤面が返されてリソースが尽きてしまった時、頼れるのはデッキトップからのドローだけになる。 この時に期待するカードがドローできるか否かで、中盤以降の動きが左右されると言っても過言ではないだろう*5

デッキ構築とドローは、上記の点で矛盾しているようにも感じるが、ドローの期待値を高める (≒無作為性を小さくする) 方法は存在する。

  • デッキの総数を少なくする
  • 非アクティブなカード、優先度の低いカードをデッキから取り除く
  • そもそも期待値が気にならない程度にドローを重ねる

これらの手段を供給するカードはいくつか存在するが、いずれにしても「初期手札チェック」をしただけでは、なかなか見えてこない。 この時に見るべきは、手札に何があるかではなく、デッキに何が残っているかである。

そこで、本手法を採用することで、ドローによる期待値を確認できると考えられる。

提案手法

手順

本手法の手順は至って単純である。「理想の初動ができた場合に、デッキからなくなるカードを取り除いていく」、ただこれだけだ。

個人で行う場合は、以下のいずれかの方法を取れば良いだろう。

  • カードデータベースに登録されているデッキをコピーし、そこから初動で使用するカードを取り除く。もちろん、その状態のデッキで「お試しで5枚ドローする」機能から、実際にドローするカードを確認するのも良いかもしれない。
  • 実際のデッキで一人回しを行い、初動が終わった段階でのデッキの中身を確認する。

一方で、各種メディアで紹介すること自体は少々難しいかもしれない。

  • ブログの場合は、単に取り除いた後のレシピ画像を掲載すれば良い。
  • 動画でデッキ紹介を行う場合は、後に紹介する事例のように、デッキレシピを並べた状態から初動の展開説明がなされると、残ったカードに注目することで確認できる。

上記方法で紹介は可能だが、1記事あたりの文量画面あたりの情報量が多くなってしまうことが懸念される。それで雑然としてしまうのであれば、残念ながら本手法を活用した解説の優先度は落ちるだろう。
本手法のような考え方が広く知れ渡っていないのは、このようなところも一因であると思われる。

もちろん、「ドローの価値が高いデッキ」を紹介する際に本手法が存在することは、頭に入れておいて損はないだろう。

注意事項

  • 本考察はデッキプランの如何を考慮していない。サーチ・リクルートが豊富に行なえ、それだけで戦うことができる (≒ドローに対するウェイトが高くない) デッキに於いては、本記事の考え方はあまり重要視されるものではないと思われる。本手法を適用しやすいデッキは、中速~低速のデッキであると筆者は考えている。
  • 本手法を元に、どのようなカードを採用すべきかはここでは触れない*6。それぞれのデッキ・環境に合わせて最適なカードを試行錯誤しながら見つけていくのも、カードゲームの醍醐味の1つであると筆者は考えている。従って、カードの選定は各々で行っていただきたい。

参考事例

ここからは、実際のデッキを参照しながら、デッキ内のカードがどのように推移していくかを考察していく。

なお、筆者自身が現在所持しているデッキでは、本手法の利点を明確にするには些か心許ないと感じたため、他の方のデッキについて紹介しながら考察をしていくこととする。
引用・転載を快諾していただいた方々には、この場を借りて感謝の意を表したい。

ここで紹介するということは、少なくとも筆者にとって参考になる点が大いにあったということの証左でもある。
したがって、本記事に興味を持たれた方は、是非ともそれぞれの引用元コンテンツも閲覧していただきたい。

ヘロンさん【仮組】の場合

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note.com

詳細は元記事を参照していただきたい。

このデッキは1枚で動き出せるカードが大量に投入されており、かつ2枚の組み合わせで動き出せるカードもいくつか見られる。一方で、当人も下記のように言及している通り、フィールドに維持することで特定のサイクルを組み上げる動きは (強いて言うなら「イビルツイン」モンスター程度しか) 採用されていない。

大目的としては事故率が低い事、1妨害に怯まない事の2点。
目的達成のため、

  • 初動札を多くする事
  • 効果無効にはリンク素材に回して対応する事
  • 除去に対しては、依存度の高いエンジンを作らない事で致命傷を避ける事

以上の3要素を踏まえてカードを選定しました。

これをデッキの中身という視点で考察すると、下記の情報が得られる。

  • 1枚で動き出せるカードからコンスタントに1~2枚のカードがデッキから取り除かれる
  • 「混沌魔龍 カオス・ルーラー」の墓地肥やし効果により、デッキ内のカード総数を更に少なくできる
  • 「Evil★Twin キスキル」「闇の増産工場」「混沌領域」など、ドロー効果を持つカードが複数採用されている
  • モンスターは「混沌の創世神」「混沌領域」、魔法&罠カードは「トロイメア・グリフォン」で必要な時にピンポイントでリソース回復するよう構成されている

結果として、シンプルながらも1枚で動き出せるカードが終盤まで非アクティブになりにくい仕組みとなっている。

ヘロンさんは他にも興味深いデッキを構築されているので、気になる方は下記リンクより他のデッキも是非閲覧していただきたい。 note.com

流れ星ちゃんさん from てーげーデュエル【Bad End Night】の場合

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youtu.be

このデッキは「夢魔鏡の天魔 ネイロス」を主軸としたデッキである。
詳細は元動画を参照していただきたいのだが、このデッキに於いて初動が終了した後のデッキの中身は下記画像の通りになる。
(厳密には「エターナル・カオス」が初動なので、このカードも最低1枚はデッキから取り除かれている)

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最終的な盤面は「夢魔鏡の天魔 ネイロス」+「エルシャドール・ミドラーシュ」に加えて、前者の誘発効果の条件であるリリースを行えるカードで構成されており、そもそも形成された盤面自体が非常に強固なものとなっている。その上で、画像の「烙印共鳴」以上のカードがドローで期待できる状況を構築している。
デッキに残ったカードは相手を詰めるカード、自分のリソースを回復するカードが半々程度投入されており、ドローによる期待値が十分に担保されているのではないかと思われる。

流れ星ちゃんさんが所属するてーげーデュエルでは、この他にも興味深いデッキ・対戦が多数投稿されている。 筆者のお気に入りチャンネルの1つでもあるので、是非とも視聴していただきたい。

www.youtube.com

最後に

以上で、「初動後のデッキレシピを閲覧する」手法によるデッキ構築論の紹介を終了する。

今回は理解が得られやすいように初動かそれ以降かに分けて話を行った。
実際には、カードがアクティブになるタイミングはカード毎に異なる。また、初動が複数採用されているデッキも存在する。本記事を参考に、初動率だけで考えるのではなく、中盤以降の決闘の進行とそれに伴うデッキの内容を照らし合わせてカードを選定することで、より確からしい戦術を伴ったデッキ構成になるのではないかと筆者は考えている。

その結果、筆者は初動偏重が必ずしも良い結果を結ばないという結論に行き着いたわけだが、その話はいずれ機会があれば別の記事にしてみようと思う。

本手法が読者の方々の一助となれば幸いである。

更新履歴

  • (2021.07.26) 「n枚初動」が「1枚から動けるカードの枚数がn枚あること」と「n 枚のカードを使用する初動のこと」の2つの意味で使用されていた。前者のみの意味とし、後者は「n枚で動き出せるカード」に統一。
  • (2021.07.26) 提案手法の手順に、実際のデッキで行う方法を追記。

*1:初期手札が理想の組み合わせである確率。

*2:ここでは、大会環境に主軸を置かない決闘者、およびデッキのことを指す。少なくとも筆者の目線では、相手を制圧・封殺し (過ぎ) ないことを信条としていることが多い。

*3:もちろん「ライブツイン」モンスターであれば、ランク2 (+アーゼウス) / ディサイプル + ディヴォーティー / コード・トーカー等、他の展開に置換することは可能である。

*4:この時、デッキに大量のカードを投入してまで最初に「イビルツイン」にアクセスしないといけないかを考える必要がある。場合によってはあえて初動の枚数を減らしたり、そもそも「イビルツイン」ではない別の選択肢を考えることになるだろう。

*5:この無作為性が、カードゲームを楽しいものにしている大きな要因であると筆者は考えている。

*6:性質上、安直で汎用的なカードしか挙げられないであろうことが考えられるため。